「やだなあ」
「なに文句いってんのテンゾウ」
「僕、アンダーの替えないんですよ。あとプロテクターも」
「しみったれたこというコだね、そんなの事務方に貰えばいいじゃない」
「今月だけで三枚ダメにしてるんで」
「うわ」
「乱暴な仕事が多すぎるんですよ」
「えー、でもちょっとダメにしすぎじゃない?洗濯下手なの?」
「洗濯?」
「血とか。泥とか」
「そんなのもありますけど、大体は破れますね」
「つけおき洗いするといいんだよ〜。いきなり漂白剤とか使ってない?」
「だから、破れるんですって」
「そんなのもあるっていったじゃない。そーいうのはどうしてるのさ」
「つけますよ」
「落ちるでしょ」
「いうほど落ちないですよ。匂いも残るし、結局使えない」
「ぬるま湯に最初つけてる?漂白剤と水だけじゃイマイチだけど温度
追加するだけで全然違うワケよコレが」
「だから使えないっていってるじゃないですか」
「だってオマエ、水につけちゃってそーな顔してるんだもん」
「どんな顔ですか。ホラ待機時間も任務の内ですよ。集中してください」
テンゾウの指差した方向から、あと半刻もすれば、敵がなだれ込んでくる。
先行している仲間の仕掛け通り、この場所で指示通りコトをすすめなくては
ならない。
「すっごいいいのに。ぬるま湯に漂白剤とかしてさ、小一時間つけとくだけ
で全然違うのに」
「しつこいですってば」
「だいたい、破るってなんだよ。そんな引っ掛けてばっかなの?」
「集中です、先輩。集中。待機。わかります?」
「あーもうかわいくない、なんでこんな子になったんだか…決めた。今回服
破いたらオマエ罰ゲームね」
「勝手にきめないでくださいよ」
「あと、帰ったらつけおき洗いの講習するから、ウチに集合ね」
どっちにしろ罰ゲームじゃないか、という反論は、当然通らなかった。