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 School Days.

ヤマトはその日、軽く緊張していた。

先生、と呼ばれる人口があふれているこの昨今、自らの卒業校に思いがけず
縁があり、新卒から少し遅れた夏直前といってもいいこの初夏に教員として
採用されたのだ。
大学に入った頃は、自分はなんとなく会社員になるんだろうな、といった
漠然としたイメージしかなかったが、アルバイトには塾の講師を選んだ。
特に経験がなくともそれなりの収入から始められたからだ。
それでも実際に始めてみると、マニュアル以上に自分の工夫次第で伸びる
子供の姿を見るのは楽しかった。
特に子供が好きだとか、特別な感情はないはずだった。
教えるのは楽しかったが、それだけだった。
──はずなのだが。漠然としたイメージは、いつのまにか会社員、になる
自分から教員になる自分に取って代わり、なんとなく。まさしくなんとな
くとしか言いようのない熱心さで、教員への道を選んだ。微妙な出遅れも、
新卒に間に合わないこともまったく気にならなかった。
さらに言うなら、勢いに流される自分というものが生来、感動が薄いタチの
ヤマトには新鮮にうつったのだ、というと不真面目な動機になるんだろうか。

ところで、ヤマトが緊張している理由は、今日がまさしく生徒と触れ合う
初日だから、というかわいらしいものではなかった。二日酔いが抜けなかった
のを、ばれないようにするため気を張っているのだ。
匂いはどうにかすることができたが、ぼんやりと残る倦怠感や強い頭痛に
顔をしかめるのは憚られた。そんな時にかぎって、校長の挨拶が長いのが
堪らないな、とヤマトは少しだけ眉を顰めた。眉くらいはいいだろう。
眉くらいなら。校長のクセなのか自分の強調したい部分になると自然と
力が入るのか、マイクを握り締めてふるせいでハウリングがおきるのが
辛い。
いや、それよりも。どうして昨日あんなに飲んでしまったのか。自制でき
ない自分にほとほと呆れた。さすがに自重するべきだったと思う。いくら
酒を過ごす相手への気安さに嬉しさを感じていようと注意すべきだ。
特に今後は、一応聖職につくわけだから余計に。

全体朝礼の席で一通りの紹介を終え、ヤマトは副担任を任されたクラスへ
と、担任である夕日紅と共に廊下を歩いていた。彼女は既婚者で、この春
めでたく懐妊されたのだそうだ。なのでヤマトの扱いはほぼ産休の代役で
ある。教員余りが嘆かれる昨今、突然教職を取りたいと方向変換したヤマ
トの前途はやや多難だった。ただし、こうして母校に潜り込むことができ
たのだから、運は悪くなかったのだろう。経験者ではないからダメ元でと
向かった面接先で、馬車馬のように働く新人がいいと目の前で言われた時
は正直面食らったが、言葉はなんだろうがスタートラインにつけるなら
なんだって歓迎だ。
そういった理由で、中途採用の新卒という割とそれはアリなのかといった
状態で教員となったのである。
紅の担当クラスは二年だ。受験の手前で微妙な(さすがに三年ほどじゃな
くても)難しいとこなんじゃないかと思ったが、特に気にされてないらし
い。それでいいのかと思いもしたが、わざわざ自分を代役にあてる不安要
素を申し出ることもないか、とヤマトも気にしないことに決めた。
気にしてもしなくても、結局やることはそう変わらないと思ったからだ。
愚痴をいってみても、じゃあ一年生なら出来るかといわれると、これは
これでとりまとめが大変かもしれないので、結局はだまって受けるしか
ないのだが。
前を行く紅のカカトはさすがに低めだ。それでも歩みが力強いのか、リ
ズムよく音を立てながら廊下を歩く。遅れないように、近づき過ぎない
ように注意を払いながらついていく。匂いは、多分大丈夫なはずだが
女性は嗅覚が鋭いところがあるのでやはり気を使う。気分はまだ悪かった
が、たちっぱなしじゃないだけ気が楽だった。
「そこそこ濃いけどみんなイイ子よ。気楽に構えて」
振り向きもせずに紅が言う。声は笑っているから、そう重くは受け止め
ない。望むところですと気合は見せた。
頼もしいわね、と微笑む背中の後を俄かに背を伸ばして追った。

廊下を見て回りながら、昔と変わらない印象を受けて改めて感心する。
懐かしさに自分の世界に入ろうとしたところで、目的のクラスの前に
たどりつく。
いけない。
子供と大人の間にちょうど位置する彼らとの対面は、特に第一印象が
重要だろう。ヤマトは一度深呼吸して立ち止まり、振り返った紅に目で
頷いてみせる。
それを受けて、彼女が戸を開き──。担任の登場で一瞬静かになった
室内は、続いたヤマトの姿をみて再度沸いた。
「ほら、あんたたち席について。行儀悪いところみせるんじゃないわよ」
「くれないせんせー、そいつ誰!」
「新任の先生じゃない。バカ、朝聞いてなかったの?」
「紅先生の後釜?」
「ほらほら、一気にいわないの!そういうのが行儀悪いっていうのよ」
ヤマトはそのやりとりに、どの時代も子供は変わらないもんだなあ、と
自由に喋りだす子供らを見た。…いやでも、ずいぶんと制服の自由度が
上がったかもしれないなと、教室を見回した。
───見回して。
ひとり、教室の奥でニコニコ手を振っている男がいる。
…男?少年じゃなく、男?見覚えがある外見だ。
まさか、と動揺を隠せずにもう一度しっかり見ようとヤマトが思わず
身を乗り出すと、顔の半分をマスクで隠した男は、右手で軽くマスクを
つまんでずらすと、形のよい唇をみせた。その唇がドウモ、とかたどる
のを呆然と見つめて。
「あんた、なんでココにいるんですか!」
ヤマトは思わず指差しして叫んでいた。

第一印象はやさしく丁寧な先生像を、とイメージしていたヤマトのもく
ろみは自らの雄叫びによってもろく崩れ去ったのだった。



本編へ続く。
冒頭だけお試し版です。
今こうしてみると意味なく前置き長い・・・!改めてみるんじゃなかった!
(印刷する前に見ろorz)

けっこうつめつめだったはずが、これじゃおわらないなあとけずっていったら
すかすかになってしまった見本・・・みたいなしょうせつに・・
あれこれは一応CMだよねorzすみませんすみませんorz
テンカカになりたかったテンカカ小説です。円山はいつもこうです。
わたしほどテンカカを合体させてみたい人もいないだろうに。
これはあれですねあくえりおんな本をだすべきなんでしょうかね(知るか)
最後超日記ですみませんです。