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 花のお里の恋愛事情


ここにひとつの下心がある。

ひどく単純な構成でなりたつそれは、いわゆる「好きな相手にかっこいいとこ
みせたいなあ」から始まって、「かっこいいと思われたいなあ」に流れて最終
的には「やらせてくんないかなあ」となる。

最終形態の直前に「好きになってくれないかなあ」が入るのが普通だが、
答えの位置はだいたい一緒なので割愛。
で、自然とやらせてくれないかな、とポロリともれてしまうのは、テンゾウが
生物学的に男だからである。

テンゾウは数えで十九になった。
急激に伸びた手足や肩の先がわずかに幼い面影を残しながらも、どこか落ち
着いた雰囲気や、みつめられつづけると深みにはまってしまいそうなその眼差
しを考慮すれば特定の相手もおらず手馴れた女たちならば快く(?)応じてくれ
そうな、そういう不思議な説得力のようなものがテンゾウにはあった。玄人受け
すると評判の、そのテンゾウ君(十九)は今、恋をしていた。相手もおそらくテン
ゾウのことを悪からず思っているはずだ。

仲間内でもテンゾウにだけボディタッチが多いし(三ヶ月統計を取り続けて確信
した)、甘えるようなしぐさもよく見せる。ほかの人間の前ではあまりしないらし
いが、ツーマンセルを組む時に自分に寝ずの番を頼んだりもする。少なくとも
ほかの人間よりは気安い間柄だ。そこまでネタがあがればそりゃもう相手だって
おまえに気があるだろうとなるんだろうけど、なかなかうまくは運ばない。
なぜなら、相手も男で、多分どっちかというとオチが「やりたいなあ」になる人種
だからだ。

「このあいだの任務ではいいとこまでいったと思うんですけど」
「いいとこまでってどこまでだ。二丁先の角くらいか」
「・・・ああ、歩いてみたいですねぇ。昼間に街中はなかなか一緒に歩いてもらえま
せんから」

深夜限定です、とテンゾウは両手を組んだまま何度か頷く。まじめに聞くのが嫌で
先ほどから適当な返事を繰り返しているのはアスマだ。ただ、この後輩は奇妙な
熱心さで迅速に回り込んでくるからタチが悪い。
「そろそろ強引に出てみてもいいころだと思いますか?」
「知るか」
「先輩、どういうタイプが好きかくらいわかるっていってたじゃないですか」
「だから女しかわかんねぇって何度言わせんだ!カカシの体が目的でヤツに
 襲いかかるような男がそんなにいたわけでもねえし、だいたいそんな自殺
 志願者に話なんて聞いたことねえよ!」
「声大きいですよ!」
「・・・・・・だから、ヤツの男の趣味なんてわかんねぇからオレに聞くなって
 いってんじゃねえか」
「・・・・・・でも、先輩はことあるごとにあなたのこと腐れ縁だって」
一気に恨めしそうに澱みはじめたテンゾウの声をきいて、もう何本目かしれない
タバコを最後に一息おもいきり吸い込んで。
苛立ちも隠さずに灰皿に押し付けると、アスマはわざとらしく大きなため息をついた。


ああ、自分はなんて時期に里に帰ってきてしまったんだろう。




本編へ続く。
冒頭だけお試し版です。
テンカカネタなのにテンゾウとアスマだけすねorz

アスマ受難話になってしまいました。
テンカカのつもりで書いたのですがorz