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 任務、救援部隊。


    がさり、と音がする。
    顔の右側が暖かい。光が差し込んだのだろう────見えないけど。


    「なんだ。思ったより元気そうでよかった」

    元気じゃないです。その証拠に声を聞くまであなただと気付きませんでした。

    「オマエの木遁こういう時は便利だけど、ちょっと不便でもあるね」

    どっちなんですか。

    「味方にわかる程度にチャクラちらしといてよ。ほんっと探したんだから」

    散らしたら辿られると判断したから木で覆って隠れたっていうのに、無茶をいわ
    ないでください。

    「まあ、大変だったみたいだし、文句つけてもしょうがないか。さ、コレ飲みな」

    慎重に抱き起こされるが、同じ姿勢でいたせいでなだめるようなその動きさえ
    辛い。強張った背中をやわらかく手が這った。と、口元に覚えのある苦味と硬
    い感触の後に水を含まされる。うまく飲み下すことができずに、唇からだらしな
    くこぼしてしまった。気持ち悪い。

    「あー。飲む元気くらいあるでしょー。ほら、飲みなって」

    強引だなあ。増血剤ですか?でもほんとちょっと苦しいんですけど。

    「ほら、飲んじゃいな。美味しくはないけどイイコトあるから」

    痛いわ、うるさいわで少しだけいらだつ。不条理な怒りだとわかってはいても、
    ついよぎってしまう八つ当たりのような思考。
    ああ、あやすみたいに肩叩かないで欲しい。子供じゃないんだから。

    「早く飲まないと無理やりいくよ?赤ちゃんプレイみたいなことしたくないんだけ
     どなー。うまく飲めないってんなら赤ちゃん扱いするからね。テンゾーちゃん」

    ソレやめてください。すごいむかつく。

    「しょうがないな。押し込むか…」

    ため息と共に、強引に丸薬と水を押し込まれた。苦しさからむせそうになるのを
    こらえて、どうにか嚥下する。咳こんだ途端、胸の傷と未だ強張りのとけない身
    体の節々に痛みがはしった。ああ、もうほんと恨みたい。

    「飲みこめたね。ん、いい子だ」

    イイコじゃないだろ、と閉じた瞳の下で(気持ちだけは)にらみつける。
    片手でボクを支えながら、おおよそ丁寧とはいいがたい手つきでヘッドギアが外
    される。その振動、首にちょっとだけ響くな。でも頭部周辺には深刻な傷はなさ
    そうだ。切羽詰った状況で気を失ったので、状態確認すらできてなかったことに
    いまさら気付いた。
    吐き気はない。骨は折れていない──ひどい打撲と腹部の切り傷が問題だ。
    熱はそのせいだろう。ただ、腹部は落ちる前に最低限のあて布をしたし、失った
    血液も、落ち着かない呼吸も。今飲んだ増血剤で貧血症状が少しでも改善され
    れば話せるようになるだろう。今はいい。無理はしない。
    敵の気配はなく、乱暴な所作ではあるが味方が診てくれている。とり急ぎ説明
    が必要な状態ではないということだ。

    熱のせいで、冷ややかに感じていた体温が少し離れる感じがして。
    そこで、また小さく、暖かな呼気が顔をなぞった。

    「まだきついかなぁ。かっこつけて殿なんか引き受けるから」

    かっこつけてません。
    誰かが引きつけないと、里まで安全に書物を運べないと判断しただけです。
    ていうかまだきついんです。静かにしてください。

    「めんどくさいのとやりあったもんだね。アイツ、限りなくSに近いA級だよ。」

    でしょうね。正直とどめを刺したか確信がもてなかったくらい、まいりましたよ。
    増援がきてたら死んでた自信はあります。まあ、だから隠れたわけですけど。

    「よくやったっていってあげたいけど、こんなとこで孤独死しそうなヤツのこと
     なんて褒めてあげないよ」

    孤独死て。

    「やだな。急に冷たくなってきたような気がする。ガキなんだからさっさと体温
     あげな」

    熱、高すぎても困るんですけどね・・・って、痛い。抱きしめないでください。
    漏らしたうめき声に、さっきより近いところからまた呼気がかかる。顔が近い。

    「まだ返事なしか・・・。そろそろ気付いてくれてもいいんじゃないの?あーあ、
     もう文句のネタないよ。待ち合わせに遅れる……のはオレだしね。三角食い
     しないってのは入るか?違うか。そいえばなんでオマエあんなに各個撃破
     なの。ゴハン食べながらおかずたべなさいよ。あー、あれはどうだ。自分を
     大事にしない?」

    なんで疑問系?
    ていうかあなたにだけは言われたくないなあ。
    ま、意識はあるんですけどね。外に出すまで繋がらないだけで…。もうちょっと
    落ち着くまでは冬眠よろしく決め込みます・・・って、ちょっと待て、なんで文句
    探す必要があるんだ。

    丸薬のおかげか、感覚を拾える範囲が広がっていく。ボクの身体に回した手は
    緩まないまま。そのせいだろうか、抱きしめる腕が少し震えている。
    そこに、自分が流したものとは異なる血の匂い。火薬の匂いも混ざっている。

    ああ、なんだ。やっぱり仕留めるまではできてませんでした?それとも増援が
    きてたのかな。あなたも少しは手こずったわけだ。
    それなら多少はいやがらせを受けるのもしょうがないなあ、と苦笑い。

    「案外ネタってないもんだねぇ。普段オレのがワガママいってるからなー。文句
     言おうにもあんまないや。ごめーんね」

    え、自覚あったんですか。

    「こういう時ってさ、やさしくしちゃうとダメなんだって。感動して昇天されてもいや
     じゃない」

    また変な思い込みを。
    無理に冷たくすることないじゃないですか。ていうか誰から仕入れてきたんです
    その変なネタ。あなたのいやがらせなんてたかがしれてるのに。

    ぽたり、と頬になにかが落ちた。流れる感触が鈍い・・・って、コレ血じゃないです
    か。ボクを抱きしめてるヒマがあるんなら、拭ってくださいよ。

    「起きなよ。早く帰ろう」

    もうちょっと。
    ごめんなさい、もうちょっと回復するまで待ってもらえないですか。大丈夫です。
    きちんと立ちます。里まであなたの負担にもならない。

    最初のイライラから、既にほだされてる自分がいるあたり、ばかばかしいやら
    おかしいやら。

    そんな寂しそうな声出されたら、申し訳なくなってくるじゃないですか。
    そんな思い、させたいわけじゃないし。あなたのぼんやりした声をきいてると
    落ち着いてくる。大丈夫だって、改めて感じることができる。そういう意味では、
    随分とあなたに甘えてるような気がします。他に気配がないってことは、おそ
    らく単独で早駆けしてきたんでしょう。ああ、自惚れたくなる。

    この人が、万人に対しても同じように駆けるだろうと、知ってはいるけど。

    「色仕掛けで起こせばよかったかな。でもキスってのもベタすぎるしねぇ」

    きっとこんな風に冗談めかしていうのは、ボクくらいなんじゃないかな。
    意外と清楚な人だから。



    「帰ったら赤ちゃんプレイさせたげるから」





    ────それだけはカンベンしてください。











そんだけです。(三度目)
オチはないです(言い切った)
た、短気なテンゾーとアホな先輩ですorzすいませーん(逃げ)
任務で傷ついたテンゾウさんと、かけつけた先輩話。ていうか
そんな説明が毎回必要なあたりどうなのよ。(ごめんなさい)

オレはいいんだよ、赤ちゃんプレイくらいさあとにじりよる先輩に
軽く引く後輩ってちょっとかわいい。でも実際やるとなったら
逃げ出すのはきっと先輩。このへたれ悪女めえええ!(ええー)