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 寝物語。

    ボクらは全然似たところがないのに、ときどき、ものすごくよく似ていると思う。


    今日は二人して我慢大会だ。

    「寝なよ」
    「・・・・・・眠れないんですよ」
    「なんでこっち向くかな。むこう向いて寝てよ」
    「先輩が逆むけばいいじゃないですか」
    「オレは昔から右向きで寝るってきめてんの」
    「そんなこといって朝おきたらフツーに仰向けたりうつぶせたりしてますよ?」
    「右向きじゃないと眠りに入れないっていってんの」
    「気のせいですよソレ。だいたいあなた普段どんな姿勢だって寝るじゃない
     ですか」
    「それは外ででしょー?せっかく里でまったりしてんだから、好きなように寝せ
     てくれてもいいじゃない」
    「そういうことは、ご自分の部屋で寝るときにいってくださいよ、ここ誰のベッド
     ですか」
    「テンゾウの」
    「でしょ?で、ボクはこの姿勢で今日は寝たいんですよ」
    「先輩のいうことをよく聞くテンゾウのベッドです」
    「うわ、そういうこというかな」
    「いいますー」
    「・・・・・・譲る気はないってことですね」
    「そーです」
    「語尾だけ丁寧にされても神経逆なでするだけですよ」

    フツーにゴハン食べて、フツーにテレビでも眺めながら話して。遅いから寝よう
    かって何もせずにベッドに入って既に10分。広くはないベッドの上で、互いに
    好き好きの姿勢を取ろうとして睨み合い中。なんでこうなったんだか。

    「だいたい狭いんだよシングルなんて。オマエもうけっこー儲けてんでしょ、ダブ
     ルベッドくらい買っちゃってよ」
    「いつもそのシングルでのんびり寝てるじゃないですか、急に文句いわないでく
     れます?そりゃ広くはないですけど、一人なら充分なんですから」
    「うわー酷いよテンゾー、一人で充分だなんて、人様を誘っておきながら!」
    「今日は誘ってないじゃないですか」
    「・・・・・・!歓迎されてなかったんだオレ・・・すごいショックだよ。慰謝料にむこう
     むくのを要求するよ」
    「無茶な丸め込みやめてください」

    ほんと、なんでこうなったんだか。
    ていうかこの人がココで寝る時はだいたいそれなりのコトを済ませてから気絶す
    るように眠るから。だからいままで文句がでなかっただけなんだろうか。
    たしかに狭いけど、いつも、壁にむかって同化しようとしてるような背中に添うよ
    うに眠ると、ちょうど狭いベッドに収まることができたのに。
    その奇妙な一体感は割とボクを満足させたのに。

    「もしかして先輩、照れてるとか」
    「てれてませーん」
    「・・・よく考えたら、お互いシラフでベッドに入るのってもしかして初めてじゃない
     ですか?」
    「いつも酔った勢いでやってるみたいにいわないでくれる?」
    「はぁ、スイマセン」
    「まあ、そんなよーなもんだけどさ」
    「改めて言葉にすると動物っぽいですね」
    「だねえ。だめだねオレたち理性がないね」
    「でも譲りませんよ。ボクは今日こっちむいて寝たいんです。それにこれ、ボク
     のベッドです。ちょっと狭いですけど、寝るだけなら問題ないじゃないですか」
    「だって目の前にテンゾーがいるの、おちつかないじゃん」
    「落ち着いてくださいよ。もう何回寝てると思ってるんですか」
    「うわー遊び人ぽいセリフー、フケツー」
    「ごまかされませんからね」
    「ちっ」
    「ちっとかいわない」

    もともと、くだらないことで愚痴をいう人ではあるのだけど。ほとんどが言葉遊びの
    類かと思いきや真剣に言ってきてる場合もそれなりにあって、今回がいったいどう
    なのか、ソレにあたるのかなんて、まだボクには判断することができない。
    できないから、なんとなく毎回懐柔するようなことになるわけだけど。

    「目、瞑ってくださいよ」
    「・・・つぶった」
    「じゃ、おやすみなさい」
    「やだなあ、視線感じるよ」
    「あー、みえてません。暗いし」
    「嘘だね、この程度の暗さすら見分けないんだったらオマエ引退だよ、引退」
    「じゃあ、ボクも瞑りますから」
    「やっぱみてたんじゃん」
    「みてましたよ。悪いですか」
    「開き直り〜?」
    「直ります。寝ましょうおやすみなさい」
    「・・・ちぇー」
    「眠たくないのなら、起きますか?」
    「・・・・・・やだね」
    ごろごろしたいんだよ、と小声が続いた。

    「起きるのなら付き合いますよ」
    「そんでドーブツめいたお付き合いすんの?それもなんかちょっとやだ」
    「動物ですから、間が持たないとそれなりにそうなるじゃないですか」
    「持たせてよ、間」
    「だってボク若いんですよ。ガキですよ。覚えたてですよ?多少はがっついても
     しょうがないじゃないですか」
    「いうなあ、テンゾー」

    だって、近くに慣れた体温や、匂いまで感じることができるのに。そこまでぼや
    いてみて、ああなんだ思ったより我慢してたんだなと客観的に思った。
    それこそ動物みたいに、手探りで切り開きたいのを我慢して。先輩がワガママ
    いってる間中、ボクはヨダレたらしてるのに平気なフリしてるのか。
    それはそれで自己嫌悪だ。

    「じゃあ、ボクあっちで寝ます」
    「え」
    えってなんだ、え、って。
    「・・・・・・せまいし、いやなんでしょ。見られながら寝るの」
    「そうだけどさ」って、ため息。なんだかよくわからないなあ。
    わからないついでに、こちらもため息をこぼした。少し困ったような息遣い。
    こういうのはちょっとずるい。明らかにあっちが年上なのに、なぜかコドモをいじめ
    てるような気分にさせられる。
    「オレがワガママで、テンゾーを無理やり服従させてるみたいじゃない」
    「・・・・・・それ以外のなんだというんですか・・・じゃあ、姿勢はこのままで、ボクが
     先に寝るってのはどうですか」
    「あ、いいね。いい妥協策だ」
    それは妥協なのかと問い詰めたかったが、話がこんがらがるのでやめておく。
    自己嫌悪にも若さにもフタをして、今度こそ瞳を閉じる。
    あ、ほんとだ。意外と視線って感じるもんだな。
    こんな至近距離だから余計に。
    「へー、睫毛ながいね、テンゾー」
    「・・・暗いのにじろじろみないでください・・・」
    「さっきいったじゃない。この程度の暗さでこの距離で目が効かないなんて暗部
     引退だよ引退」
    「じゃあボク引退します。実はもう夜目がきかなくて」
    「その棒読み、三代目の前でもできるなら申し出てもいいと思うよ?」
    「目閉じてるのにこんなガンガン話したら眠れませんよ」
    「そこで寝るのが暗部でしょ」
    「どんな暗部ですか、それ」
    ひとしきり無駄口を叩いて、気付くと目蓋に力をこめなくても閉じたままになって。
    そばにはあたたかいかたまりがあって。意識はゆっくりとぼんやりした闇にのま
    れていった。



    翌朝、のんびりパンを焼いただけの朝食を(ほんとに焼いたパンしかなかった)
    ふたりで食べながら、先輩がつぶやいた。
    「昨日さ、なんでか、むしょーにテンゾー撫でながら寝たかったんだよね。正面だと
     なんか照れくさいし、下半身撫でたいわけじゃないし」

    いつもより三割増しで方向がバラバラの寝癖の正体を知りながら、ボクはだまって
    パンをかじるのだった。




    ────撫でたい気持ちは同じでも場所は完全に違ったらしい。








オチはないです(いつもです)
がっつく後輩ですいません。しかもすごく頭悪い。先輩は頭ゆるい。


これ書きかけ文のサルベージです・・・が、途中でシリアスやーめた
って感じがひしひしと伝わってきます。まあそのせいで(いや、その
せいだけじゃないな、元からだ)更にやばい仕上がり・・・。
先輩と後輩、若い頃やっちゃったり仲はよくてもお互い踏み込んだ
りはしてないと思う・・・のでヤマカカになってから燃え上がるといい!
あ、でもテンカカでも燃え上がってもらってかまわない!!

ということでどっちでもいいです。(なにそれ)