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 お休み中。

    テンゾウの目は大きい。

    「そんないうほど大きいですかね?」
    「大きいよ。正面からみられるとビクつきそうになるくらいには」
    「ビクついたことないくせに」
    「いや、結構驚いたよ?はじめて顔みたとき」
    「そんなそぶりなかったですよ」
    「最初から悟られるようなヘマはしません」
    「目か…目?目ねぇ。先輩も小さいわけじゃないでしょうに…大きいからって
     特別目がいいわけじゃないですよ?仕事柄特徴があるのもマイナスだと
     思いますし」
    「いや、でもなんかそこまで個性的だといいかもって思ってきてさ」
    「…いいかもってことは今までどう思ってたんですか…」
    「まあまあ。てか、見てるだけで吸い込まれそうな目ってあるんだなって」
    「仮面ありますけどね」
    「外した時をいってるわけヨ、オレは」
    「仕事中は外しません」
    「そだね」
    カカシはそこで一息ついたように、手元の本から顔を上げ、卓上の向こう
    側でこちらをずっと見つめるテンゾウの瞳を。
    もう一度確認するように視線でなぞった。

    「読書、終わりですか?」
    「まだ読むよ。いまは観察してんの」
    「目の大きさを?」
    「そうそう」
    「瞳孔がずっと開いてるみたいにも見える。不思議な目だね。こんな黒
     みたことない」
    「生きてますよ」
    「知ってる」

    だから、初めてみたときちょっとだけ驚いたんだよ。

    なんて個性的な表情なんだろう。
    なのに何故周囲に溶け込んで見えるんだろう。
    立ち居振る舞いはあくまで大人しく、一歩下がって目立たない。
    任務で気配を殺すことなど造作もないが、一息ついてもよいはずの
    この里で。圧倒的な大多数を黒髪の者が占めるこの里で、どうあって
    もどこか悪目立ちしてしまう自分と、どこが違うのか。

    個性的な男だ。
    なのに、埋没できる男だ。

    テンゾウの瞳に、言葉どおりすいこまれそうな気分になって、ふいに
    目をそらした。ごまかすように、指先はいささか慌てて頁をめくる。

    「大きな目ってね、敵を威嚇するとかそういう効果もあるじゃない」
    「今度は案山子と同じ扱いですか…って失礼。偶然にも呼び捨てに」
    「気にしなくていいのに。ま、野生の動物みたいに敵を追い払う機能が
     備わってるといいよね。蝶とかフクロウとかみたいにさ。」
    「その都度、僕の面は割れてしまうわけですね」
    「つかえないかなあ」
    「つかえないですねえ」
    「魔除けとかダメかね」
    「無理ですよ。目なんて子供の頃からこんなもんですけど、それで災厄
     からのがれられたかっていうとそうじゃない」
    むしろ、とテンゾウは一言こぼしてそのままだまりこんだ。

    「お茶」
    「え?」
    「冷めましたね。入れてきます」
    テンゾウがそのまま台所に立つ気配に、本の背にかかった小指に力が
    入る。────今のは、よくなかった。

    いうべきではなかったのだ。








テンゾウをトラウマーみたいに書いてしまってすいません。