index

about

text

memo

link

info

TOP










 たけのこほってきました。


    目の前には13本ものたけのこ。
    土がまだついています。

    「不吉だね。テンゾーこれは不吉だよ」
    「・・・あなたが食べたいっていうから取ってきたのに、そんなこといわ
     ないでくださいよ」
    「なんでわざわざ誂えたよーに13本にしちゃうかなー」
    「帰り道の真ん中にちょうどいいふくらみをみつけちゃったんですもん。
     漏れなくとっちゃうでしょ」
    「13本・・・不吉だ。ほんと不吉だよ。鵺の鳴く夜は恐ろしいんだよ」
    「そもそもどうして不吉なんでしたっけ」
    「外国の宗教の関係だったような」
    「先輩の信仰はその宗教と関係が?」
    「ん?ないよ?」

    実際のところ、13という数字とカカシの間に因果関係はなさそうでしたが、
    いかんせんこのご家業です。知ってるだけでも縁起がわるいということで、
    とりあえず不吉じゃない数にするように、と、一本だけ先にいただくことに
    しました。

    「新鮮だから刺身がいいなぁ。先っぽ食べたい」
    「瞬身で帰ってきましたから」
    「バカだなあ、もっとゆっくりすればよかったのに」

    これ以上機嫌を悪くさせたくなくて、必死で消費したチャクラにまで文句
    をつけられたらかないません。収穫した中からとりわけ姿がよく、つやが
    あり瑞々しいものを選びました。
    テンゾウがたけのこを湯にくぐらせている間に、カカシは目玉焼きを作り
    ます。冷凍しておいたご飯を多めにレンジで解凍して、その間にわさび
    も摩り下ろしておきます。あとは、お歳暮でいただいた頂き物の即席味
    噌汁をつけてなんとなく朝食の形を整えると、二人で席に座り、両手を
    ぴたりとあわせ「いただきます」とつぶやいて箸をとりました。

    「あ、やっぱりおいしい。シャキシャキだ」
    「よかった。苦労した甲斐がありました。でもほんと美味しいですね。
     切ってゆでるだけで、こんなぜいたくな味になるとは」
    「旬のものを食べるのはいいねー」
    「また明日食べますか」
    「でも流石に明日はアク抜ききちんとしないと無理じゃない?」

    夜は一緒に任務が入ってるので、夕食に嗜むこともままなりません。

    「・・・一本でも結構おなかいっぱいになりますね」
    「ね。この半生も充分美味しいんだけど、最後あたりやっぱ舌がピリピリ
     してきたよーな」
    「アクですね」
    「ね」

    ふたりは美味しくたけのこを味わいましたが、今はもう不吉ではなくなった
    12本のたけのこが、まだそこにあります。ちょっとだけなかったことにした
    くなりましたが、そういうわけにもいきません。

    「どうしましょう、残り」
    「うーん・・・なんか作っとく?仕事の方は朝には片付くと思うんだよね」
    「そうですね・・・っていいたいんですけど」
    「なに」
    「ボク、料理はできません」
    「えー」

    えー、じゃないとテンゾウは思いました。

    「刺身作るくらいだから、てっきり作れるもんだとばかり」
    「ってことは先輩も」
    「知らないよそんなの。食べるのは得意だけど」

    野営では採るんだけどねぇ。ふたりは困ってしまいました。
    自分では作らなかったもんとカカシはなぜか堂々と語ります。

    「詳しそうだったのに」
    「食べるのはそりゃ誰でもできるからさ」
    「そりゃまあそうですけど」
    「問題はこの残りだよ、テンゾウ」

    テンゾウは精神的にやや老成していたので、問題作ったきっかけはあんた
    じゃないのか、とはいいませんでした。
    調子にのって取ってきた自分にも責任が多少はあるかもしれないと考えた
    のです。賢明な子です。

    「若竹煮は好きです」
    「わかめの買い置きもないくせにえらそうなこというんじゃないよ」

    ふたりはすっかり困ってしまいました。

    「あ」
    「あ?」
    「あ、く抜きしておけば持つんじゃないの?」
    「アク抜き・・・までなら、ボク調理番の手伝いしたときにやったことあると
     思います。そこまでなら」
    「よし、でかしたテンゾウ、じゃあアク抜きだ!」

    そこでふとふたりは気付きました。12本すべてを処理するのに、雪平鍋
    のみが鎮座するこの台所でなにができるというのでしょう。

    テンゾウはいよいよ打つ手に困って、裏手に住む老婆の元へ、知恵を借
    りにいくことにしました。事情を説明し屋外用の羽釜も借り、これで準備
    は万端です。目の前には鍋。更に老婆からアク抜きに必要なものもおす
    そわけしてもらいました。近所のおつきあいはしておくものです。今後も
    荷物が重そうだったらもってあげよう、とテンゾウは思いました。

    「先輩、皮向けました?」
    「うん。皮、どこまでむいていいのかビミョーだけどとりあえず普段食べて
     るよーな姿になってればいいんだよね」
    「多分」
    「たぶんかー。ていうか結構土が中まで入り込んでるんだなー」
    「ですね。よく洗ってくださいよ」

    カカシは外に出るから、と手ぬぐいで顔を隠しています。その適当ななり
    は、カカシ本来の整いすぎた容姿と微妙に相容れず、うさんくささでいっぱ
    いです。そんな彼が庭でたけのこを水洗いしている姿を見て、裏の老婆の
    ところへ一緒に行かなくてよかった、とテンゾウは思いました。
    洗いあがったたけのこをしき、浸るまで水と米ぬかを入れ、弱火でコトコト
    煮込みます。

    「意外と時間かかるね」
    「ええ」
    「オレ着替えてきてもいいかな」
    「だめです」
    「えー」

    火を扱う以上、そばを離れるわけにはいきません。正直ひとりでも(ひとり
    のほうが)充分だったのですが、ここで目を離すと、ぐうたらなところのある
    先輩がその後手伝わないことは目に見えています。テンゾウは心を鬼に
    して拒否をしました。

    たけのこを前に、手持ち無沙汰になったカカシは、なんども何度もたけのこ
    に串を刺しました。そんなに頻繁に刺さなくても、とテンゾウは思いました
    がかえって煮上がりが早くなるかもと放置することにきめました。

    ふと気配を感じて視線をあげると、近くの大きな枝ぶりのよい木の上で、
    暗部がこちらを覗いています。

    「あー、おはよー」
    「・・・おはようございます」

    おはようございます、と律儀に返事をした暗部は近くに人の気配がないこ
    とを確認すると、堂々と火の傍まで近寄ってきました。

    「なにしてんですか?これ」
    「「たけのこのアク抜き」」
    「いや、それはわかるんですけど。二人庭先でなにやってるんだと思った
     ら・・・びっくりしたー」
    「掘ってきてくれたんだけど、今日夜いないからさ」
    「あ、なるほど。だから」

    暗部は通りがかっただけだったようです。

    「あ、オマエもしかして上がりじゃないの、この後」
    「はい、そうですけど」
    「料理できる?」
    「オレはできませんけど、かみさんが」

    いいことに気付いた!とばかりにカカシが勢いを増しました。

    「これ、よかったらもっていかない?もうちょっとしたら出来るから」
    「え、いいんすか」

    とってきた本人にも聞いてほしいものですが、正直残りは12本。貰って
    いただけるならば大変助かります。

    「いいですよ。ご近所の方にもよかったら」

    実はいっぱいあるんで処理に困っていて、と笑うと、気のいい暗部は面
    の下からうれしそうな声を出しました。

    「ありがとうございます。思いがけないみやげで家内も喜びます」

    彼と同行していたと思われる数人が、遅れてきたのか、そのやりとりが
    気になるようで同じようにこちらをみつめています。

    「あー、おまえらもおいで。たけのこもっていきなよー」

    いいんですか先輩マジですかと全員わらわらとよってきます。茹で上が
    ると、12本のたけのこは数本を残し、全員に貰われていきました。あと
    は残った内の一本を裏手のおばあさんに差し上げて、自分達で消費す
    れば問題ありません。これで万事解決、と鍋を洗い、火の始末をつけて
    いるときにふと気付いたのですが。

    「・・・いまさらいうのもなんですけど」
    「ん〜?」
    「土ついたまま、詰め所においとけばよかったんじゃないですかね」
    「あー。」


    ふたりは、今おもいついたといった風情で、3本の水煮の前で立ち尽くす
    のでした。










そんだけです。(二度目)
すごいそのまんま後日談・・・。ぐだぐだした話の後日・・・というより
直後の話。しかもこれテンカカ?一応事後とはいっていますが。
ていうか暗部がちょっとさざえさんみたいな感じになってきました。
すいませんちょっと書いてみたかっただけです。そしてきっとその後
帰ってくる頃には、きちんと若竹煮とかおすそわけしてもらうと幸せに
なると思います。
このテンゾウはまだカカシ先輩を偉大だとは思っていないと思う。
あの毒はじわじわきいてくるといい!(毒扱い)

【追記】ところで料理ができないのになぜか変なモノだけはある
冷蔵庫のモデルになったのはウチの曽祖父の家です。タマゴと
わさびと玉ねぎだけは切らしてませんでした。何者。