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 すでにかこになったちいさなおとこのはなし。


    「あー、やだやだ。にょきにょき伸びちゃってさ」
    「いいじゃないですか。元が小さかったんだから今でも足りないくらいですよ」
    「ちいさいてんぞーはかわいかったよ。そんな口答えもしなかったね」
    「してました」
    ああもー、とカカシはやさぐれた態度を隠しもせず、うつぶせた姿勢から更に
    のびあがり、枕に顔をうずめた。

    「コドモは大きくなるモンです」
    「オマエいつまでコドモでいる気〜?」
    「大人になるまで」
    「具体的な回答は避けるわけね。大人だね、そーゆーずるさは。ずるい子は
     コドモ扱いできないよ」
    「いいですよ。コドモじゃこんなことはできないし」
    白い背中に唇を落とすと、目の前の肩がかすかに震える。
    「やら、しーことするってことは・・・さ、大人なんじゃん」
    ぼやきがすこし途切れがちになる。どこか間延びした、おちつきのある声が
    自分の動きで途切れたりするのだと思うと、小気味好い。

    「まあ、そうですね。早く大人になりたいだけの子供って気もしますが」
    「ししゅんきみたいなこといわないの」
    「ちょっと遅かったんです」
    「思春期?」
    「ええ」
    じゃあやっぱガキなんじゃないの?あれ?じゃあえっちなことはしちゃいけない
    じゃん。淫行じゃん。
    ブツブツ枕からくぐもった声が聞こえるのがおかしい。ことに及ぶ前と最中と後
    で、こんなに態度が、雰囲気が違う人もいないような気がする・・・というほど、
    テンゾウ自身に多彩な経験があるわけでもないのだが。
    それとも、誰でもこんなふうに様ざまな表情を隠し持っているのだろうか。
    さすがに他人に質問できる内容でもないし、聞くつもりもないが興味はある。
    というか、出てきた。普段聞き逃してきた、同僚達のくだらない閨での自慢話
    にも耳を傾けてみようかな、とぼんやり考える。
    眼下ではひとり、問答を繰り返すカカシの背中が揺れている。淫行にあたるか
    どうか、自分達に置き換えたところで、既に忍としてお互い自立した者同士、
    まず意味はなさそうだがどうなんだろう。

    カカシはときどきこうやって、言葉遊びの延長か、世間の、忍者でない一般の
    人間の常識を持ち出してきて仮定を楽しむところがある。
    それをみるたび、ひとりでも飽きがこなくて楽しそうなだなと感心はするのだが、
    裸でベッドにいるときくらい、もうちょっとしっとりした空気を持続させてくれても
    いいんじゃないか、という気もする。
    うん。多分この要求は間違ってない。まあ、グダグダ文句をつけるヤクザくずれ
    のこの人もそれなりにかわいくはあるのだけど。

    「大人の真似は子供の特権ですからね。興味のあることならなんだってします」
    「うわー、愛のない言葉。キョーミで片付けられちゃうんだ。オレいますごい痛い
     思いしてるのに」
    「愛?ありますよ。ガキ扱いされないために必死なだけです。そういうのは大人
     の余裕で許していただかないと」
    「・・・あれ、テンゾウ大人なんだっけ。わかんなくなってきた」
    「もうどっちでもいいです」
    「大人にしときなよ。でもそのかわり身長伸びるの禁止で。打ち止めね」
    回りまわって、身長への文句に戻ったらしい。

    たしかに身長は伸びた。ここ一年で10センチほど伸び、夜に身体がきしむ音が
    きこえるような気がしたくらいだ。事務方からも支給服の申請の度に感心され
    たし、なによりこの人の視線が。自分を見据える時に、首を動かさなくなった
    その視線が、まるで対等な者をみるようで、ひそかに気に入っているのに。
    それでもまだ僅かにカカシのほうが大きいので、テンゾウからすると、身長を
    追い抜いた時点で文句をいってほしいと思う部分はある。折に触れ、小さい
    頃はどうだった、昔はかわいかったと引きあいにだされることが増えた。
    小さい頃ってなんだ、ここ数年の話だろと思ってみても、出会った当時の印象
    というものはなかなか拭えないものらしい。

    「だったらコドモのままでいいですよ。まだあなたを追い越してませんからね」
    「そーゆーとこくらい先輩たてなよ。あー、ほんとやだ。昔はさ、ほんとにかわ
     いかったのになー。たけのこみたいに伸びるの早いんだもん・・・って、あ」
    「どうしました?」
    「たけのこ急に食べたくなった。掘ってきて」
    「大人のクセにワガママいわない」



    じゃあオレこそコドモでいいよ。そのかわりやらしーことは禁止だよ、とわめき
    だしたこの人を、一体どうなだめたものか。










そ、そんだけです。
このこ〜の方で勝手に推奨している、暗部に入った頃チビだったテンゾーさん
の延長話。結局このあと、たけのこ堀りにいったんだと妄想して、土にまみれ
た手のテンゾーでまたおなかいっぱいです。しあわせだなもうそうしゅうかん。
いっぱいとってきたので庭でアク抜きしてたら暗部の人たちが覗きに来るよ。
そんでおすそ分けして、色んな料理になって帰ってきて満足するといい。

ほんとは拍手用に書いていたのだけど、いきなりやっちゃった後の人たちに
なってしまってたので(最後あたりに気付いた)慌てて中止。というわけで
やっています。でもお色気はないです。きっと最中はそれなりにあるんだと
思います。きっとジョイトイ(違)。