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 くだらない愚痴話。

    よく誤解されているなあ、と思うことがある。

    暗部は血生臭い仕事ばかりをこなしている。
    暗部は血に飢えた人間が多い。
    暗部はその任務の凄惨さから、人格に支障をきたすこともある。
    暗部は────。

    名前ほど、暗殺しかしないってんじゃないんですけどね。

    「名前が悪いと思うんだよね」
    「はぁ」
    いきなりナニを言い出すんだ、といわんばかりにテンゾウは訝しげなトーンで
    返事をよこす。
    はいはいごめんなさいよ。
    その言葉にいたるきっかけがあるのなら、きちんと前置きしてから話せと煙草
    くさい昔馴染みにもよくいわれているんですけど、なかなか直んないんですー。

    共感を得たくて話しかけたわけでも、説明したいわけでもなく、つぶやきたい
    だけの言葉だから、よけいに。

    「名前というと」
    「名前っていうか、名称?」
    「名称というと…?」

    ほっといてくれてもいいのに、目の前の後輩は人の話を広げるの名人で、こち
    らが話しやすいようにそそのかすのが実にうまい。
    最初の返事がなんだこいついきなりみたいな口調だったのに、次いだ言葉は、
    親に童話をねだる子供のように、こちらの口元をくすぐる。
    あー、なんだ。そだね。まあ、話してもみてもいいかって気分になってるよオレ。

    「暗部ってさ、名前が。いかにも物騒じゃない?」
    「・・・・・・・・・・・・そうですね」
    「無理に同意しなくてもいいのに」
    「いや、無理じゃなくて、まさかそんなところから引っ張ってこられると思って
     なかっただけです。お気になさらず」
    「オマエはさ、まだ新人じゃない」
    「はい」
    「最初さー、あんまいいイメージなかったんじゃないの?任命された時とか、
     うわーとか暗部だよいやだなーとか思わなかった?」
    「カカシ先輩ご自身はどう思われてたんですか?」
    「オレはそーいうこと、あんま考えたことなかったからなあ」
    「考えたことないのに、イメージ悪いと思われるんですか」
    「こないだ、昼の任務で一緒になったやつらが、すごい恐がっててね」
    「先輩をですか?」
    「ううん、噂話。彼女と外で仲良くしてるときに暗部をみたことがあるって一人が
     言い出してさ。その暗部が返り血浴びてたんだっていうんだけど」
    「はぁ」
    「見つかったら殺されるのかもっていいだして」
    「はぁ。」
    「任務途中か事後かわかんないけど、もし隠密行動中だったのなら口封じされ
     るかもしれないって盛り上がっちゃって」
    「・・・・・・木の葉の忍とも思えない発言ですが・・・」
    「うん、まだアカデミー生だったから」
    「・・・・・・子供で既に彼女持ちとはやりますね」
    「感心するとこ、そこなんだ」
    「ちょっと驚きました。今の子は早熟だなぁ」
    「まあね〜。ま、仲良くってのも普通に仲良くしてただけみたいなんだけど」
    「野外でいそしんでるのを先輩がぼかした言い方にしたのかとばかり」
    「もしやってたら世も末だよねえ」
    「ですね」
    「早熟が悪いとはいわないけど、自分のケツふけないガキはやっちゃだめだよ
     って思うな〜」
    「何の話してるんでしょうね、僕たち」
    「だね。ま、そんな下忍でもないやつらのいうことだからイメージ過剰なのは
     わかるんだけどね。実際は暗部なんてけっこうそこいらにいるわけじゃない」
    「極論ですけど、そうですね」
    「で、別に姿見られたからって構わず口封じとかするわけないじゃない」
    「面をしたままなら余計に必要ないですし。里の中の話でしょう?子供にみら
     れるくらいだから昼間ですか。そのいでたちで目撃されたのは軽率だと思い
     ますが・・・返り血だって別に相手を殺さないとつかないわけじゃないのに」
    「ね。それこそ動物の保護とか怪我人の手当てでもつくじゃない、それくらい。
     でも子供だから、もう想像だけですごいことなっちゃってて、暗部はなにかと。
     殺人鬼かと」
    「ずいぶんとヤクザな扱いだったわけですね」
    「オレそれ聞いてて、イメージ悪いなー、この中で暗部所属になるやつでたら
     泣き出すんじゃないかなとか思ってさ」
    「それで、ウチの名称がイメージ悪いと?」
    「そう」

    自分が暗部の人間だからいいわけするわけではないが、暗部の活動はまさ
    に多彩だ。火影直轄の精鋭部隊。
    暗殺戦術特殊部隊。
    かといって全員が暗殺に携わるかというと、そうではない。
    木の葉の忍として、立場を明確にするわけにはいかない任務が国と国の成り
    立ちの上で、数多く存在する。
    その為の忍だ。表から見えないところで、木の葉として、火の国の者として、
    いわば正統派の隠密であるといえるだろう。
    里と火影への絶対の忠誠を持ち、卓越した技能を持つ者ならば、下忍、上忍
    の立場に関係なく、任務を遂行できる仲間として選出される。

    活動内容が一般に漏れることがないが、組織の存在そのものは認識されて
    いるから、こういった認識の誤差が生まれるのだろう。
    自分たちのように戦闘に主に動員される戦忍タイプの暗部もいれば、実質、
    諜報活動のみに従事し、地味な裏方として、その活動を支える者も数多く
    存在するというのに。

    「まあ先輩が悩むようなことじゃないと思いますけど」
    「そうなんだけどさ。子供の言うことだから、もうストレートに効いちゃったね
     オレは。あんさつせんじゅつとくしゅぶたい!って。そら普段暗殺しかして
     ないように思えるよなーと。寄らば切る!って感じにみえるなと」
    「その時は、失礼ですけどそのお姿で?」
    「あー、いやいやさすがに変化で同年代の姿になって混じったよ」
    「でしょうねえ。知らない人に対して、アカデミー生とはいえそんな愚痴をい
     うものかなと、さすがにおかしいと思いました」
    「というわけで、ちょっとショックを受けたので、こぼしてみただけなんですー」
    「先輩、語尾延ばさない」
    「真似してみた」
    「子供の?」
    「うん」

    テンゾウのこういう先生みたいなところがちょっと好きだ。
    軽く呆れられてるのは感じられるが、元からたいした話じゃないのを拾ってくれた
    のはあっちなのだし、いいか、と開き直って。

    「いまさら、名称を替えるのもおかしな話だと思いますがね」
    くだらない内容の割りに、まだ拾ってくれるらしい。
    「暗部のイメージアップのために、今日からかわいい名前でいくとか、火影様に
     宣言されても逆に困りそうだし、いいんだけどさ」
    「前向きな名称にされるのは、自画自賛みたいで恥ずかしいですね」
    「逆に恐いよね、前向きで美しい団体名で暗殺も請け負いとか。現行から残せ
     そうなの戦術特殊部隊?とかそれくらいかー」
    「まさに軍隊ですね」
    「ちょっとおおげさだな」
    「暗部でいいじゃないですか。多少恐がられるくらいが、近づく輩が少なくていい」
    「ま、結局そこに落ち着くんだけどね」

    というわけで話は終わり。すっきり。


    「その子供達の話をきいて、そのままショックを受けて帰ってきたんですか?」
    ──終わらせてはくれないのね。ま、いいでしょ。
    「いや、切なくなったんで今後こういった誤解が広がらないようにさ」
    「はぁ」
    「自分にも似たような経験があるけど、そのとき居合わせた友人はそのことを
     よく公言していて、いきなりある日・・・って震えながらそこで止めたらみんな
     青ざめてたなー。軽く口止め促進みたいな?」
    「・・・・・・・・・・・・あんた」
    お、あんた呼び。ちょっと新鮮。
    「だいじょーぶ、単なる噂話のひとつじゃない。任務につくようになったらあれは
     都市伝説だったってすぐ気付くよ。なんかもー、あそこまで恐がられてるなら、
     いっそ近づきたくないと思わせたほうがいいかなーと思って」
    あはは、と軽く笑って流すと、ため息ひとつ。

    「まったく・・・そういうオチつけなくてもいいのに」





    「ところで先輩、今夜の集合、内容ご存知です?」
    「うん。オレが一応隊長だからね。ちなみに目的は暗殺です」


    残念、二段オチでした。








なんじゃーこりゃーorz 
やっぱり結局暗殺してんじゃんってだけの話です。UPした直後にいろいろ
修正忘れに気付いて、結局ちまちま書き足してしまいました〜。
なにしにカカシがアカデミーにいったかというと、イタチ見学なつもりです。