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 0915 

「はたけ上忍、お誕生日なんですね。おめでとうございます」

ありがとね、なんて軽く微笑みかえして、なんてことのないような態度を保ったまま
きびすを返す。
正直驚いた。

そうだよ、オレ今日誕生日だった。



なんせ忙しいこの家業だ。
誕生日だからって周囲の友人知人が毎度集うわけもなく。そりゃ常駐で顔晒せる
仕事ばかりを受けていれば、それなりにそういう流れになるのだろうが、カカシは
現役の暗部だった。
気のいい先輩後輩が気を回して、ということも、長い暗部生活ではそれなりにありは
したが、ここ数ヶ月はおそらく全員休み無しだ。馬車馬のように働かされるくらいに
忙しい。
そんな中に祝いの席を期待するのも変な話しだし、どちらにしろカカシ自身が忘れ
ていた。人に言われないと思い出せないのって割と終わってるなあと思う反面、
男がいちいち気にすることでもないからなと本音がよぎる。

今回は偶然気のいい受付の中忍(だろう)が祝ってくれたから当日中に思い出せた
が、ここ数年はずっとあとになって「ああ、そういえば」と思い出すのが常だった。

外に出ると、日付はまだ超えていなかったがすでにとっぷりと暮れている。
夕刻の終わりごろに戻ったはずが、想像よりは時間をとられていたようだ。
今回の任務事態は暗部絡みの仕事も混ざっていて、同僚とコトをこなしつつ、〆と
報告は上忍として表に出るという、手順だけが面倒な内容だったので、思ったより
報告に・・・というより火影への説明と口裏合わせの打ち合わせに時間をくったと
いうのが正しい。

ふと、傍の木の上の方から人の気配がして、声が落ちてくる。
「長かったですね」
「テンゾ、先に上がってていいっていったのに」
今回はテンゾウとのツーマンセルだった。任務中、こき使った自覚はあったので、
解散を先にしておいたのに。

カカシが任務の都合上、通常の忍服を着ているのに対し、テンゾウは当然ながら
暗部服だ。だから堂々と表には出てこないし、いまだって姿は隠してる。
周囲に人の気配なんかないといっても油断はしないのだろう。

いい教育受けてるな、ってこれは自画自賛になるのか?
まあここまででかくなってからの教育となると、いい教育ができたかできないかは
正直受ける人間のモラルにかかっているような気はするので、あまりえらそうなこ
とはいわないでおきたい。

「そういうわけにもいきませんよ。事と次第によってはまたとんぼ返りですから」
「そうならないために説得に勤しんだのに」
「まあまあ、でも終わったと安心した直後によばれるよりは楽なんですよ」
「まあねえ」
「終わり、でいいんですね?」
「うん、おつかれさま」
こうした会話も、傍からみたらただの危ないオトコに見えるんじゃないだろうか。
別に人目があるわけじゃないけど、そう思うと自分がおかしくてたまらなかった。
「もういいでしょ。降りといでよ。ねね、メシ、たべてかない?」
「いいですね」
音も立てずに横に立ったテンゾウの身のこなしを、目の端で採点しつつ含み笑う。
いい動きだなあと、もう一度遠まわしに自画自賛。

中忍の指摘通り、誕生日なんだと思い出したら、ここで解散オヤスミってのはさみ
しいものだ。だって一応オレ彼氏もちだし、隣にいるのがまさしく彼氏だし、と内心
うなずいたところで。

「・・・・・・あ」
「何か、指示ありますか?」
「あ、ごめん。ううん、違う」
「だったらよかった」

テンゾウと何故か、なるようになったのは最近の話だ。

忙しい中なんでこんなことになってんのと思ったけど、多分忙しかったから判断能力
がお互い死んでたのかもしれない。
キスもしたし寝たりもしたし、告白めいたこともしたけど。
テンゾウに自分の誕生日をいうのも忘れてた上に、テンゾウの誕生日すら知らない
ことに、今更気づいたのだった。

薄汚れた背中には、ついさっきまで潜んでいた常緑樹の葉が張り付いてる。
ということは、生地がささくれてるのかもしれない。血がついてるとか。
肩のあたり、何か掠めたのかなと思う一方で聞きたくなる。

テンゾウ、おまえ自分の誕生日、知ってるか?

たったの20年も生きていないのに、テンゾウの過去を思うと、奇跡とかいう
言葉が過ぎらずにはいられない。運命ってのもそうなんだろうけど。

テンゾウが、あの忌まわしい実験施設の中で。
ベッドだらけの一室の中で、かろうじて一人だけ息をしていたのを発見したとき
のことを今でもすぐ思い出せる。自分もかかわった任務であったこと。
そしてあの日、施設内すべてを探し周り、生き残った人間が僅かにいたとしても、
表の世界に戻れないだろうということを知っていた自分は。
ずっと、生き残りがどこへと行くことになるのか、ずっと気になっていた。

テンゾウはいつも飄々としてて、相当に重い過去を、そんなこともありましたね、
みたいに軽くいなしてみせる。それはおそらく本音でもあるのかもしれない。
だが正直、カカシはいまだにテンゾウのことがわからない。
クールに振舞っているだけで、その表面の下にマグマを持っているような気も
するし、本気で「そんなこともあったなあ」と思っているのかもしれない。
大蛇丸の話だってたまにしているが、もしかしたらつつかれたくない角度だって
あるんじゃないだろうか。

自分が、もう過ぎたことだと、父親の話をうまく流すことができないのも似たよう
なものではないかと疑っている。
それとも、自分がそうだから相手を疑ってしまうのだろうか。

たかが誕生日の事を、大げさな、と思うのに、何故かそのことを伝えるのに躊躇
すらしている。

「・・・テンゾウ」
ぽつり、と声が漏れた。
きっちりそれを拾って、テンゾウは振り返ると、心配そうにこちらを伺ってくる。
「・・・どうしました?やっぱ疲れてます?」
「いや、大丈夫なんだけど。店どこが開いてたかなって・・・でもこの時間じゃどこも
 やってないような気がしない?」

声にまで出したつもりは無かったのに、と取り繕いながら返す。繕った割には理に
かなってる返事ができた。
「朝までやってるとこ、ありましたよね。甘味屋の奥とかに」
「今日でも休日明けじゃない?休みぽくない?」
「・・・・・・可能性、ありますね」
仕事の後輩としてはわかりやすいといえるほどの男だが、やはりテンゾウはカカシ
には理解不能だ。
なんせ、自分のことが好きだなんていう男だ。
まずその時点で理解不能だった。

「門の方から確認してきます」
「・・・ん?」
今いる位置は里の中心部だ。
忍の足を使えばそう時間はかからないとはいえ、わざわざ、今から確認だけにいく
のもどうかと考えていると、表情に出ていたのか、テンゾウが「ああ」って感じにこな
れた顔で笑って見せた。
「ボク、今回余力があったので」
「で?」
「木分身の・・・ちょっと使い方違うんですけどね。種を、いつでも発動できるように
 門の傍の木に仕込んでたんです。それ動かしますよ」
「・・・・・・もしも用?」
「そうです、もしも用。簡単な見張りもできますし聞き耳立てるのもお手の物ですよ?」
「・・・おまえってほんと便利なやつだなあ」
そんでもって、ちょっと嫌味だ。
なんだそのチャクラの活用術。まったくもってうらやましい。
「里なのに」
「里だから、ですよ」
ちくりと入れたつもりが返された。
「ちなみにこれは先輩からの教えです。僕らは暗部ですからね」
「・・・ほんと、よい教育をお受けになって」
「おかげさまで」

ほんとに、よくできたヤツだ。
しかも褒めた(ことになるかな)とたんに、頬染めたてちょっと自慢顔ですか。
いちいちかわいい顔するな、きもいから。
ていうか本気でそれみてちょっと赤くなってる自分の方がきもい。

「・・・あー、だめですね。休みです。どうします?」
豊富なチャクラを有効利用(ある意味無駄な利用だが)した後輩は、ちょっと
がっかりしながらも、こちらの出方を伺ってくる。
そこまでわかってて、こっちに決定権持ってくるあたりはずるい。
可愛いとおもうべきか、詰められていると驚愕すべきか。

「・・・うち、おいでよ。うまい酒もらったんだ。つまみはろくにないけどさ、このまま
 終わりよりは気分いいでしょ」
テンゾウはそのまま、餌をもらった子犬みたいな顔になって頷いた。

相手の顔色を伺ってるのが、相手だけじゃないことがわかって少し面白くない。
浮かれて足音を少し立ててるとこだけ、ちょっと可愛いなとは思ったけど。
最初は気分よく誘ったつもりが、妙にすっきりしない感じが残る。その理由なんて
わかってる。
「・・・なんかショック」
我ながら、ブスくれた声が出たもんだと関心する。が、ショックの方が強くてもう
取り繕う気にはなれなかった。
「・・・・・・店ですか?」
「ううん、違う。けどいい」
「え・・・?」

自分が有利でいたかった、なんてどこの女の子のいいわけだろう。
どうやら、想像以上に自分はテンゾウにちょっとやられていたらしい。

誕生日のことなんて当然言えない。変にうろたえた自分のハラが決まったら、
そりゃいつかポロっといってしまいたいけど。
相手を傷付けるかもしれないとか、嫌われるかもしれない言葉はひとつも出したく
ないなんて、ほんと何処のコドモだ。

「なんか、オレ思ってたよりおとなげないわ・・・」
「・・・いや、あの・・・ほんとどうしたんですか先輩・・・急に・・・」
少し震える声でテンゾウが聞いてきたが、やっぱりそれに見合う返事をする余裕
がない。
自分にがっくりしてたからだ。

「いいんだ。行こう」
「・・・よ、よくないですよ!!やっぱりなにかあるんじゃないですか先輩!?」
「ナイナイ。ほら、家にいこ」
「なんかボクしました?」
「したわけじゃないけど、原因はオマエになるのかなあ」
「・・・・・・・・・!!」



そもそもオレは恋愛をしたことがなかった。
なのでコレが多分始めての恋とかなんだけど。

後で、久々に地元に戻ってきてたアスマに悩み相談を持ち込んだ際、ツッコミ
いれられるまで、思いやりの前に自分の話術に問題があることには気付かな
かった20歳の残暑だった。






あれっ(よくあるある)
えっと多分これは任務話にかこつけたいちゃいちゃ書いちゃうぞー
→ちょっとシリアスぽくもしちゃうぞー→結局だるだるしちゃうぞーー
→オチはないよーのスペシャルコンボだと思います。
迷惑なコンボ!!orz

目押しすらできないコンボ!orz
久々のウェブ更新がこんなのですいません。
でもなんか慣れないといいなあはたけとテンゾウみたいな・・・まだ
若い頃だから・・・(今も割りと若いです・・・)
誕生日、テンゾウのも捏造しちゃおうかと思ってたんですがそういう
時に限ってきっと副読本が出るぜ!ってポジティブなストッパーが
かかって(いやでもマジで出て欲しいサイも知りたいし!)こんなことに。

時間からしてギリギリUPでしたー。
書きかけの別バージョン(この後?)もあるのでそっちも休み中に上げ
ちゃいたいです。